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採用で「弱み」を隠す会社ほど、ミスマッチが起きる

2026年9月10日

●求人では、どうしても「良いところ」を伝えたくなる

求人原稿をつくる時、多くの企業が考えることがあります。「うちの魅力をどう伝えよう」。給与、休日、福利厚生、職場の雰囲気、仕事のやりがい。もちろん、どれも大切です。せっかく求人を出すのだから、できるだけ会社の良いところを知ってもらいたい。その気持ちはよく分かります。

一方で、採用支援をしていると、逆のことも気になります。「この仕事の大変なところは、きちんと伝わっているだろうか」。製造業なら夏場は暑い。物流なら朝が早い。介護なら身体的な負担がある。飲食なら土日が忙しい。どんな仕事にも、良い面と大変な面があります。しかし求人になると、良い面だけを切り取って伝えたくなる。ここに、採用のミスマッチが生まれる一つの原因があると思っています。


●隠して採用できても、仕事そのものは変わらない

求人で大変な部分を書かなければ、応募は減らないかもしれません。面接でも詳しく話さなければ、入社してくれるかもしれません。短期的には採用人数を確保できることもあるでしょう。でも、入社した瞬間に現実が変わるわけではありません。暑い職場は暑い。朝が早い仕事は朝が早い。土日に忙しい仕事は土日に忙しい。

求人で見えなくすることはできても、仕事から消すことはできない。だとすれば、その事実を知らずに入社してもらうことは、本当に採用成功なのでしょうか。


●「応募を増やす」と「マッチングを良くする」は、同じではない

採用では「応募数」が分かりやすい成果指標になります。しかし採用の目的は応募者を増やすことではありません。その会社、その仕事に合う人と出会うことです。

例えば、仕事の大変な部分を求人に書いたことで応募が20件から10件になったとします。数字だけを見れば悪化です。しかし、その10人が仕事内容を理解した上で応募していて、面接率や入社率、さらに定着率が上がったとしたらどうでしょうか。こちらの方が、採用としては良い可能性があります。

合わない人から応募されないことは、マッチングという意味では正常なこともあります。採用で本当に見るべきなのは入口の応募数だけではなく、応募→面接→内定→入社→活躍・定着までのつながりです。


●Realistic Job Previewという考え方

採用には、Realistic Job Preview(RJP/現実的職務予告)という考え方があります。仕事の良い面だけでなく、大変な面や現実的な情報も入社前に伝えるという考え方です。

「繁忙期はかなり忙しくなります」「この工程では夏場の暑さがあります」「最初の数か月は覚えることが多いです」。これは求職者を怖がらせるためではありません。入社前の期待と入社後の現実との差を小さくするためです。採用時に形成された期待と実際の仕事とのギャップが大きければ、「聞いていた話と違う」「こんな仕事だと思わなかった」となります。私はこの考え方が、今の採用市場でますます重要になっていると思っています。


●ただし「悪いところも全部書けばいい」ではない

RJPという考え方を「会社の悪いところを全部正直に書けばいい」と捉えるのは少し違います。「夏は暑いです」「仕事は大変です」「残業もあります」とだけ書けば、単なるネガティブ情報になってしまいます。大切なのは、その事実が働く人にとってどんな意味を持つのかまで考えることです。


●「弱み」は、誰にとっての弱みなのか

「毎日同じ作業を繰り返す仕事」があったとします。変化のある仕事をしたい人には退屈かもしれません。でも「決められた仕事を黙々と進めたい」「一人で集中する方が好き」という人には、むしろ魅力になり得ます。「土日が忙しい仕事」も同じです。土日に休みたい人には合いませんが、平日に休みたい人には「役所や病院に行きやすい」という価値になるかもしれません。

企業の特徴には、絶対的な「強み」と「弱み」があるというより、誰から見るかによって意味が変わるものが多い。ここに、採用ターゲットを考える意味があります。


●弱みを「強みに言い換える」のとも少し違う

求人広告では「弱みを強みに言い換えましょう」と言われます。有効な場合もありますが、注意が必要です。「残業が多い」を「しっかり稼げます」とだけ言い換える。「人手不足で忙しい」を「若手でもどんどん仕事を任せてもらえます」と表現する。事実を都合よくポジティブ変換してしまえば、結局は現実を隠すことになります。

必要なのは、弱みを無理やり強みに変えることではありません。弱みは弱みとして伝えた上で、それと引き換えにどんな価値があるのかを伝えること。

例えば、「繁忙期には残業があります。一方、閑散期には定時退社できる日が多く、有給休暇も取りやすくなります」。これは「残業がない会社」に見せるのではありません。現実を認めた上で、会社としてどう向き合っているかを伝える。この方が、誠実な採用広報だと思っています。


●弱みの伝え方には、3つあると思う

企業の弱みを採用で扱う時、私は大きく三つに分けて考えられると思っています。

一つ目は、改善すべき弱みです。長時間労働、教育体制がない、ハラスメントが放置されている。こうしたものは伝え方を工夫する問題ではありません。まず改善する必要があります。

二つ目は、仕事の特性として避けられないものです。夜勤、繁忙期、屋外作業、一定の身体負荷。完全にはなくせないからこそ、事前に正しく伝える。

三つ目は、人によって評価が変わるものです。小さな会社、ルーティンワーク、平日休み、仕事の範囲が広い。ここは「誰を採りたいのか」によって、弱みにも魅力にもなります。

この三つを混同しないことが重要です。直すべき弱みを「うちの個性です」と正当化してはいけない。一方で、人によって評価が変わる特徴まで隠す必要もありません。


●「誰にとって許容できるか」を考える

採用ターゲットを考える時、多くの企業は「この人に何が刺さるだろう」と考えます。もちろん重要です。でも、もう一つ問いを加えてみてください。「この人は、うちの何なら許容できるだろう」。

完璧な会社はありません。完璧な仕事もありません。「給与は少し下がるけれど、家から近い」「土日は働くけれど、平日に休める」「会社は小さいけれど、仕事全体に関われる」。人は複数の条件を比較しながら意思決定しています。採用とは、弱みをゼロにする競争ではなく、「何と何を交換するのか」を設計することでもあると思います。


●「選ばれる理由」と「選ばれない理由」はセット

これまでKatawaraでは「選ばれる理由」を言語化することの重要性について何度も書いてきました。その考えは変わりません。ただ、最近はもう一つ必要だと感じています。「選ばれない理由」も、きちんと理解することです。

「夜勤があるから応募しない」という人がいたとします。夜勤をなくせないのであれば、その人を無理に説得する必要はありません。その代わり、「夜勤があっても、この仕事を選びたい人は誰なのか」を考える。

これは「採用できなかった人を見ていますか?」でお伝えした失注分析の考え方にもつながります。選ばれなかった理由をすべて消すのではなく、「誰には選ばれなくていいのか」まで理解する。これは、ターゲットを明確にすることと表裏一体です。

参考: https://www.katawara.co.jp/blog/message0051


●「全員に好かれる求人」をつくらない

求人を書く時、「できるだけネガティブなことは書かない方がいい」という発想になりやすい。その結果、未経験歓迎・アットホーム・働きやすい・やりがいがある・成長できる、という誰にも嫌われない言葉が並びます。しかし、誰にも嫌われない求人は、誰にも強く選ばれない求人になることがあります。

「この仕事は、こういう人には合わないかもしれません」まで伝えられる会社は、むしろ強いと思っています。例えば「人と話しながら仕事をしたい方には、少し物足りないかもしれません。反対に、一人で集中して作業することが好きな方には向いている仕事です」。これは応募者を減らす文章でもあります。でも同時に、合う人の応募意欲を高める文章でもあります。


●入社前に辞退されることは、本当に「失敗」なのか

弱みを正しく伝えれば「自分には合わないと思いました」と辞退されることもあります。でも少し長い時間軸で考えてみてください。大変な部分を伝えずに入社してもらい、1か月後に「こんな仕事だと思わなかった」と退職する。それと比べれば、入社前に双方がミスマッチに気づけた方が良い場合があります。

辞退を減らすことと、採用を良くすることは必ずしも同じではありません。応募が減り辞退が増えたとしても、入社後のミスマッチが減り定着率が上がるのであれば、採用全体では改善している可能性があります。採用を入口の数字だけで評価しないことが重要です。


●求人は「会社をよく見せる広告」なのか

求人を「会社をできるだけ良く見せて応募を集めるための広告」と考えると、弱みは邪魔な情報になります。しかし求人を「企業と求職者が、お互いに合うかどうかを判断するための情報」と捉えればどうでしょうか。

良いところも、大変なところも、会社が求めることも、会社が提供できることも、その情報を見た上で「ここで働きたい」と思う人に応募してもらう。そう考えると、求人原稿の目的は応募数の最大化ではなく、マッチング精度の向上になります。


●弱みを言える会社は強い

採用で自社の弱みをきちんと話せる会社は、ある意味で強い会社だと思っています。自社のことを理解している。誰に来てほしいかが分かっている。全員に好かれなくてもいいと理解している。そして、入社後まで考えて採用している。からです。

弱みをすべて隠して「とにかく応募してほしい」「まず入社してもらいたい」となると、採用のゴールが入社になってしまいます。

でも、本当のゴールはその先です。入社した人が仕事を理解し、活躍し、双方が「この会社を選んでよかった」「この人を採用してよかった」と思えること。そのためには、入社前から現実を共有しておく必要があります。


●最後に

どんな会社にも弱みがあります。どんな仕事にも大変な部分があります。それを求人から消しても、仕事そのものから消えるわけではありません。

だから、「どうすれば弱みを隠せるか」ではなく、「この現実も含めて、誰ならこの仕事を選ぶのか」を考える。改善すべき弱みなら改善する。避けられない仕事の特性なら正しく伝える。人によって評価が変わる特徴なら、それを価値と感じる人を考える。

採用に必要なのは、会社を完璧に見せることではありません。自社の現実を正しく伝えた上で、それでも「ここで働きたい」と思う人と出会うこと。「選ばれる理由」をつくることは大切です。でも同じくらい「誰には選ばれなくていいのか」を決めることも、採用設計なのだと思います。

全員に好かれる求人から、合う人に正しく選ばれる求人へ。弱みまで伝えることは採用を不利にすることではなく、企業と働く人とのマッチング精度を高めるための一つの方法なのではないでしょうか。


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株式会社Katawaraは、「採用で、経営を変える」をテーマに採用支援を行っています。会社の魅力だけを並べるのではなく、仕事の大変さや合わない人まで含めて「誰にとって、この会社で働くことに価値があるのか」を整理する。そうした採用ターゲットの言語化から、求人原稿・採用プロセスまでを一貫して設計することも、私たちの支援の一つです。お気軽にご相談ください。

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