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「非正規」をなくすのは誰の仕事か

2026年7月31日

少し前に「非正規という言葉をなくしたい」という記事を書きました。

参考: https://www.katawara.co.jp/blog/message0022


働く人の約4割、2,000万人強の人たちが「非正規」と呼ばれている。しかしその大多数は、正社員になれなかったのではなく、自らの意志でその働き方を選んでいる。

「非正規」という言葉が、その選択を「正規になれなかった結果」として読み替えてしまっている。そういう内容でした。

その記事を書きながら、もう一つの問いが残っていました。

では、この言葉をなくすのは誰の仕事なのか、という問いです。


●企業のマインドは、なかなか変わらない

「非正規という言葉をやめよう」と言うことは容易いです。

しかし現実には、企業の現場に根付いた意識はなかなか変わりません。

「非正規=人手不足の補填」「コスト調整のための労働力」という発想は、言葉を変えただけでは抜けていかない。


なぜか。それは、言葉とそれを取り巻く仕組みが変わっていないからです。

求人票のカテゴリは今日も「正社員・パート・アルバイト・契約社員・派遣」に分かれています。評価制度は雇用形態で分断されています。プラットフォームの検索軸は「雇用形態」で絞り込まれています。

言葉だけ変えても、仕組みが「非正規」という概念を前提に設計されている限り、企業のマインドは変わらない。


●プラットフォーム事業者が持っている力

ここで考えたいのが、採用プラットフォーム事業者の役割です。

採用プラットフォームは、求職者と企業の「最初の接点」として機能しています。

求職者が仕事を探す時、最初に開くのはプラットフォームです。企業が採用を考える時、真っ先に検討するのもプラットフォームです。

つまりプラットフォーム事業者は、採用市場における言葉と構造を、最も大きく動かせる立場にいます。

彼らが「非正規」という枠組みを前提にした設計を続ける限り、企業も求職者も、その枠組みの中で考え続けます。

逆に言えば、プラットフォームが言葉と設計を変えれば、市場全体の認識が変わる可能性があります。


●「マッチングの場」を提供するだけではもう足りない

プラットフォーム事業者のビジネスモデルは、企業と求職者をつなぐことで成立しています。

ただ、「マッチングの場を提供するだけ」という役割は、もう十分ではない。

理由は二つあります。


一つは、採用課題の本質が変わってきているからです。

人手不足の時代に、単に「応募を集める場」を提供しても、企業の採用課題は解決しません。「どんな関わり方をしてもらうか」「どうエンゲージメントを高めるか」「どう定着につなげるか」という、より深い問いに向き合う必要が出てきているためです。


もう一つは、「関係人口」という概念が採用に入り込んできているからです。

地方創生の文脈で広がってきた「関係人口」という発想、つまり「定住はしないが、継続的に関わる人」という概念は、採用の世界にもそのまま当てはまります。

1日だけのスポットワーク・副業・業務委託・プロジェクト単位の参画。こうした「フルタイム以外の関わり方」を持つ人たちは、今や「非正規」という言葉の外側にいます。しかし彼らは、企業にとって確かな価値をもたらしています。

「非正規」という枠組みでは、この層を正当に捉えられません。


●言葉を変えることは、設計を変えること

では、プラットフォーム事業者に何ができるのでしょうか。

求人カテゴリの再設計があるかもしれません。

「正社員・パート・アルバイト」という雇用形態の分類から、「週5日フルタイム・週3日・週1日・スポット・プロジェクト単位」という関わり方の分類へ。

雇用形態ではなく「どんな関わり方か」を軸にした設計に変えることで、求職者も企業も、「働く」という行為をより広く柔軟に捉えられるようになります。


次に、評価・実績の可視化です。

スポットワークで10社の現場を経験した人の「多様な現場適応力」、副業で複数の企業に関わってきた人の「横断的な視点」。こうした価値は、従来の履歴書・職務経歴書では見えにくい。

プラットフォームが「多様な関わり方の実績」を可視化する仕組みを作ることで、企業側の評価の目が変わっていきます。


そして、発信の言葉を変えることです。

「非正規人材の活用」という表現から「多様な関わり方を持つパートナーとの共創」という表現へ。プラットフォームが率先して言葉を変えることが、企業側の認識を変えていく第一歩になります。


●これは「義務」ではなく「機会」の話

プラットフォームに義務を押しつけているわけではありません。

これは義務の話ではなく、機会の話です。

採用市場において「非正規」という枠組みを脱し、「多様な関わり方を歓迎する場」として先にブランディングしたプラットフォームは、次の時代の採用市場を取れる可能性があります。

少子化が進み、フルタイムの正社員を採り続けることが難しくなる時代に、「あらゆる関わり方をデザインできる場」を提供できるプラットフォームは、圧倒的な差別化になります。

言葉と仕組みを変えることは、社会貢献であると同時に、ビジネス上の先行者優位にもなる。そう思っています。


●企業にできることもある

プラットフォームが変わるのを待つだけでは、何も変わりません。

企業にも今すぐできることがあります。

「非正規」という言葉を、自社の中から外すことです。


社内の会議で「非正規の人たちが…」という言い方をやめる。求人票の書き方を変える。スポットワーカーや副業人材を「補填の労働力」ではなく「別の視点を持つパートナー」として向き合う。

言葉が変わると、扱い方が変わります。扱い方が変わると、その人たちのエンゲージメントが変わります。エンゲージメントが変わると、定着と貢献が変わります。

企業一社が変わることは小さいかもしれません。しかしその積み重ねが、プラットフォームを動かし、国の言葉を変えていく力になると思っています。


●「非正規をなくす」は、誰か一人の仕事ではない

「非正規という言葉をなくしたい」と書いた時、それは個人の想いでした。

今回書きたかったのは、それが誰の仕事かという問いです。

働く人一人ひとりが自分の選択に誇りを持てるようにすること。企業が「非正規だから」という理由で人を軽く扱わないようにすること。プラットフォームが言葉と仕組みを変えること。そして国が統計の言葉を見直すこと。

これらは、どれか一つが変われば解決するものではありません。

それぞれの立場で、できることがある。

ただ、最も大きく市場を動かせる立場にいるのは、採用プラットフォーム事業者だと思っています。

「マッチングの場」から「働き方の多様性を定義する場」へ。

その転換を、誰かが先にやる。

それが採用市場の、次の競争軸になると思っています。



株式会社Katawaraは、「採用で、経営を変える」をテーマに採用支援を行っています。

雇用形態にかかわらず、企業と働く人が対等なパートナーとして向き合える採用の設計を、一緒に考えることも私たちの支援の一つです。お気軽にご相談ください。

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