「非正規」という言葉をなくしたい。
2026年6月21日

本日は少し趣向を変えて。
私が人材業界に入った理由、起業への想いに繋がることをお伝えしたいと思います。
採用支援の仕事をしていると、「なぜこの仕事を?」と聞かれることがあります。
その答えは色々あるのですが、根っこのところには一つの違和感があります。
「非正規」という言葉への強い違和感です。
●働く人の4割が「正規じゃない」とラベリングされている
総務省「労働力調査(詳細集計)2025年平均結果
参照: https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/dt/pdf/youyaku.pdf
これによると、非正規の職員・従業員数は2025年時点で2,128万人に達しています。
役員を除く雇用者全体に占める割合でみると、働く人のおよそ4割がこの雇用形態に就いている計算になります。
そして、その人たちは今日も「非正規労働者」と呼ばれています。
ニュースでも、国の統計でも、人材会社の資料でも。
「非正規」という言葉は当たり前のように使われています。
でも私はずっと、この言葉に引っかかりを感じてきました。
「非正規」とは「正規ではない」という意味です。
正規を基準に置いて、そこから外れた存在として定義する言葉です。
2,000万人以上の人たちが「正規じゃない人」としてラベリングされている。
これは、本当に正しい見方なのでしょうか。
●「なれなかった人」ではなく「選んだ人」が大多数
同調査では、非正規雇用についた主な理由も調査されています。
上位3項目はこうなっています。
第1位「自分の都合のよい時間に働きたいから」757万人(男性228万人・女性529万人)
第2位「家計の補助・学費等を得たいから」366万人
第3位「家事・育児・介護等と両立しやすいから」226万人。
上位3項目だけで合計1,349万人。非正規雇用者全体の6割以上が、自らの意志や生活の文脈の中でその働き方を選んでいる計算になります。
「正規の職員・従業員の仕事がないから」、いわゆる「不本意非正規」と呼ばれる理由は173万人で、全体の約8%にとどまっています。
つまり、パートタイムや契約社員として働いている人の大多数は、正社員になれなかったのではありません。
子育てや介護と両立するために、その働き方を選んでいます。
自分のペースで働きたいから、家計を補いながら生活を整えるために選んでいます。
自らの意志で、自らの人生の文脈の中で、その雇用形態を選択している人たちです。
それを「非正規」と呼ぶことは、彼らの選択を「正規になれなかった結果」として読み替えてしまうことではないでしょうか。
世の中は、この点を大きく誤解していると思っています。
●「非正規」という言葉は、誰が作ったのか
そもそも「非正規」という言葉は、誰が作ったのでしょうか。
法律の言葉でしょうか。国の統計でしょうか。それとも人材会社が広めたのでしょうか。
正確な起源を辿るのは難しいですが、確かなことが一つあります。
法律上の正式な呼び方は「有期雇用」です。
一定の期間を定めて契約する雇用形態というのが正式な定義です。
「正規ではない」という否定の言葉ではありません。
にもかかわらず、国の統計情報も、ニュースも、採用の現場でも「非正規」という言葉が使われ続けています。
そして、言葉は認識を作ります。
「非正規」という言葉を使い続ける限り、その雇用形態で働く人たちは「正規の外側にいる人」として扱われ続けます。
そして本人たちも、いつの間にかそう感じさせられていく。言葉の問題は構造の問題です。
●人手不足の時代に、この問題を放置できない
今、日本は深刻な人手不足の時代を迎えています。
あらゆる業界で「人が足りない」という声が上がっています。
でも思うのです。本当に人が足りないのかと。
2,000万人以上の人たちが、すでに働いています。その人たちの力が今の社会に十分に活かされているでしょうか。
「非正規だから」という理由で、スキルや経験が評価されない。
「非正規だから」という理由で、正社員と同じ仕事をしても扱いが異なる。
「非正規だから」という理由で、キャリアとして認められない。
人手不足という現実は、「非正規」というラベリングが生み出してきた構造的な問題を、もう放置できないことを突きつけています。
非正規とラベリングしているうちは、根本的な問題は解決しません。
●実現したい世界
だから、こういう世界を作りたいと思っています。
パートタイムで働く人も、契約社員も、派遣社員も、「非正規」ではなく「有期雇用という選択をした人」として扱われる世界。
その雇用形態を選んだことが、その人のキャリアとして正当に評価される世界。
企業が「非正規だから」という理由で人を軽く扱うのではなく、どんな雇用形態であっても「一緒に働く仲間」として向き合う採用と組織が当たり前になる世界。
これは理想論ではないと思っています。
企業が採用を戦略として捉え、どんな雇用形態の人にも誠実に向き合うことができれば、今見えていない人材が見えてきます。「非正規」として見えなくされていた2,000万人の力が、社会に活きてくる。
人手不足の解決策は、遠くにあるのではなく、この認識の転換の中にあるかもしれません。
●採用を変えることで、世の中を変えられると信じている
株式会社Katawaraの事業の核心は「採用で、経営を変える」ことです。
しかし私個人の根っこにあるのは、もう少し大きな問いです。
採用を変えることで、働くことの意味を変えられないか。
企業が人を見る目を変えることで、「非正規」という言葉が必要なくなる社会を作れないか。
一社一社の採用の設計を変えていくことが、積み重なって、働く人全員が正当に評価される社会につながっていく。そう信じてこの仕事をしています。
「非正規」という言葉をなくすことは、言葉だけの話ではありません。
その言葉の背後にある、2,000万人以上の人たちへの眼差しを変えることです。
それが、私がこの仕事を続ける理由の一つです。
このブログでは採用戦略や採用の仕組みについてお伝えしてきましたが、その根底にはこうした想いがあります。
株式会社Katawaraは、「採用で、経営を変える」をテーマに採用支援を行っています。どんな雇用形態の採用であっても、企業と働く人が誠実に向き合える採用をつくることが、私たちの目指す支援の姿です。
