top of page

採用と育成は、なぜ「別の仕事」になってしまうのか

2026年7月14日

●採用したら、あとは現場にお任せ

「入社後のことは、現場のマネージャーに任せています。」

「育成は人事の仕事なので、採用とは別の話ですね。」

採用支援の現場で、よく耳にする言葉です。


この感覚は、珍しいものではありません。採用担当は採用まで、育成担当は入社後から。役割を分けることは、組織として自然な発想です。

しかし採用支援をしていると、この2つが分かれていることの中に、採用が永遠に改善されない理由が潜んでいると感じることがあります。


●採用と育成が「別の仕事」になった理由

なぜ採用と育成は、切り離されてしまったのでしょうか。

一つは、組織の構造上の問題です。採用は人事や採用担当が動き、育成は現場のリーダーや研修担当が動く。担当者が違えば情報も引き継がれにくい。「どんな人を採ったか」が「どう育てるか」に連動しないまま、それぞれの業務が進んでいきます。

もう一つは、評価の問題です。採用担当の成果は「何人採用できたか」で測られやすい。育成担当の成果は「どれだけ成長したか」で測られる。ゴールが違うから、自然と視点も分かれていきます。


そしてもう一つ、見落とされがちな理由があります。

「採用が終わったら、自分の仕事は終わり」という意識です。

内定承諾をもらった瞬間、採用担当者の関心は次の採用へ移ります。入社後にその人がどうなったか、活躍しているか、馴染めているか。そこまで追いかける仕組みがない企業がほとんどです。


●採用基準と育成方針がずれている企業の共通点

採用基準と育成方針が連動していない企業には、共通したパターンがあります。

採用では「主体性がある人」を基準にしているのに、入社後は「まず言われたことをやってください」という育て方をしている。

採用では「チームワークを大切にできる人」を求めているのに、現場では個人の成果だけが評価される文化がある。

採用では「成長意欲のある人」を選んでいるのに、入社後に成長できる機会や環境が整っていない。

これらは、採用の段階で「こんな人がほしい」と定義した像と、育成の現場で実際に求められていることがずれているために起きます。

採用基準は「入社させるための基準」であり、育成方針は「入社後に活躍させるための設計」です。この二つが連動していなければ、採用した人材が育たないのは当然の結果かもしれません。


●入社後の体験設計は、採用の延長線上にある

「早期離職は入社後に起きているわけではない」という記事で、入社前の期待値と入社後の現実のギャップが早期離職の本質だとお伝えしました。

https://www.katawara.co.jp/blog/message0008


これは裏返すと、入社後の体験設計が、採用の延長線上にあることを意味します。

採用の段階で何を伝えたか。どんな期待を持って入社してもらったか。入社初日に何を感じてもらえたか。最初の1週間・1ヶ月・3ヶ月で、どんな体験を渡せたか。

これらは育成の話ではありません。採用が設計すべき、入社体験の話です。

入社後のオンボーディングを採用の一部として捉えている企業は、そうでない企業に比べて定着率が高い傾向があります。それは偶然ではなく、採用してからが重要であり本番であるという設計思想の差です。

採用担当者の仕事は、内定承諾をもらった瞬間に終わるのではありません。その人が職場に馴染み、力を発揮し始めるまでが本質的な仕事です。


●「採用して終わり」が生む、悪循環

採用と育成が切り離されたまま運用され続けると、ある悪循環が生まれます。

採用した人が定着しない。また採用が必要になる。採用コストがかかる。採用担当者は次の採用に追われる。入社した人のフォローが手薄になる。また定着しない。

この循環の中では、採用の精度は上がりません。なぜなら「なぜ定着しなかったのか」という問いが、採用の設計に戻ってこないからです。

採用にかかるコストは、求人広告費・面接にかけた時間・採用担当者の工数だけではありません。早期離職が起きた時の現場の負荷・引き継ぎの手間・チームへの影響。

これらを含めた採用の本当のコストを見えるようにすると、採用と育成を切り離すことのリスクが浮かび上がってきます。


●育成を「採用の続き」として設計する

では、どうすれば採用と育成をつなげられるのでしょうか。

第一歩は、採用基準と育成方針を同じテーブルで議論することです。

「どんな人を採るか」と「入社後にどう育てるか」は、別々の会議で決めるものではありません。採用で大切にしたい価値観が、育成の現場でも一貫して問われているか。この問いを、採用担当と現場のリーダーが一緒に持つことが出発点です。

次に、入社後のフォロー設計を採用プロセスの一部として組み込むことです。

内定後の連絡・入社初日のプログラム・最初の1ヶ月の面談設計。これらを現場任せにせず、採用の段階から設計しておくことで、入社前後のギャップを小さくできます。

そして、定着と活躍のデータを採用設計に戻すことです。

どんな採用経路で来た人が定着しているか。どんな価値観を持った人が活躍しているか。どのタイミングで離職が起きているか。これらを採用の振り返りとして持つことで、次の採用精度が上がっていきます。


●採用のゴールは、入社ではなく活躍

採用のゴールをどこに置くかで、設計が変わります。

「入社」をゴールにすると、採用担当の仕事は内定承諾で終わります。

「活躍」をゴールにすると、採用担当の仕事は入社後の定着・戦力化まで続きます。

このゴールの置き方の違いが、採用と育成を「別の仕事」にするか「一つの流れ」として設計するかを分けます。

採用がうまくいっている企業を見ると、採用と育成の境界線が曖昧です。採用担当が入社後のフォローに関わっていたり、現場のリーダーが採用基準の議論に参加していたりなど、役割の境界を超えて、「この人に活躍してもらうために何ができるか」という問いを組織で共有しています。

採用を経営として捉えるとは、入社後までを見据えた設計をすることです。

「採用して終わり」をやめた時、採用の景色は変わり始めます。

あなたの会社の採用は、どこで終わっていますか?



株式会社Katawaraは、「採用で、経営を変える」をテーマに採用支援を行っています。

採用基準の設計から入社後のオンボーディング設計まで、採用を「活躍」までの一貫した流れとして構築することも、私たちの支援の一つです。お気軽にご相談ください。

bottom of page