「少子化だから新卒が採れない」で終わらせない。
-10年のデータから見えた採れる会社・採れない会社の差-
2026年10月1日

この記事で分かること
新卒採用の10年間で何が変わり、何が変わっていないのか
「採用難」ではなく「採用格差」が広がっているという現実
中小企業が新卒採用で取るべき戦略の方向性
新卒採用10年間のデータが公表された
2026年9月、Indeed Recruit Partnersとリクルートワークス研究所が「新卒採用 10年の変化と現在地」を発表しました。
リクルートワークス研究所が実施してきた「ワークス大卒求人倍率調査」など複数の調査データをもとに、2017年卒から2027年卒までの10年間の新卒採用市場の変化を整理したレポートです。
(出典:Indeed Recruit Partners・リクルートワークス研究所「新卒採用 10年の変化と現在地」2026年9月発行 https://www.works-i.com/research/report/recruitment-decade-report.html)
読んでみて最初に感じたのは、「新卒採用そのものが劇的に変わったわけではない」ということでした。しかしデータを一つひとつ見ていくと、その裏側では採用の前提が静かに変わり始めています。そして中小企業の採用を考えるうえでは、この「静かな変化」の方が重要なのではないかと思います。
新卒採用をやめる企業が増えているわけではない
まず押さえておきたいのが、企業は新卒採用をやめているわけではないということです。
新卒採用の実施割合はコロナ禍で一時的に減少したものの、その後も約8割で推移しています。さらに「毎年同程度の人数を採用する」と回答した企業は2020年の39.4%から2024年には49.9%へ増加しています。つまり新卒採用に対する企業のニーズは依然として強い。
一方で、採用全体に占める新卒の位置づけは変わっています。1社あたりの新卒採用人数はこの10年間で23.0人から19.3人へ減少。反対に中途採用人数は14.6人から25.6人へ増加しました。その結果、採用人数全体に占める新卒採用の割合は61.3%から43.0%まで低下しています。
ここから見えてくるのは、「新卒をやめて中途へ」ではなく「新卒は続ける。ただし新卒だけには依存しない」という企業側の変化です。
「新卒か中途か」という二択ではなくなっている
さらに興味深い数字があります。「新卒採用のみ」を実施する企業は18.2%から7.3%まで減少する一方で「新卒採用と中途採用の両方」を実施する企業は53.8%から63.9%まで増加していることです。
つまり、新卒か中途か、どちらかを選ぶのではなく、必要な人材を確保するために両方を組み合わせることが当たり前になりつつあります。
この変化が示しているのは、新卒採用をどう成功させるかだけを考えるのではなく、自社が必要とする若手人材と、どう出会うかというところから採用を考え直す必要があるということです。
本当に注目したいのは「採用難」より「採用格差」
今回のレポートで最も注目するポイントの1つです。
新卒採用計画に対する充足率の中央値は2017年卒の90.0%から2026年卒では78.6%まで低下しました。確かに新卒採用は難しくなっています。
ところが、企業ごとの状況を見ると違う景色が見えてきます。上位25%の企業は、この10年間も充足率100%を維持。一方、下位25%の企業は60.0%から40.0%まで低下しています。
さらに、採用計画に対して20%未満しか採用できなかった企業の割合は5.4%から13.6%へ増加しています。つまり、ほとんど新卒採用ができていない企業がこの10年で2.5倍に増えているのです。
業種別の充足具合を見ると、「運輸業」(37.5%→26.3%)、「小売業」(28.2%→19.0%)、「サービス業(他に分類されないもの)」(40.7%→26.0%)では充足企業の割合が特に大きく減少しています。こうした業種の中小企業は、採用の構造的な見直しが急務です。
この数字をどう見るか。「少子化だから採れない」だけでは、この差を説明できません。
同じ採用市場の中でも、計画通り採用できている企業がある一方、ほとんど採用できない企業も増えている。新卒採用で起きているのは単純な「採用難」だけではなく「採用できる会社とできない会社の差が広がっている」ということではないでしょうか。
採用できないから、企業は「入口」を広げ始めた
では、企業はこの採用難にどう対応しているのでしょうか。レポートを見ると、採用の「入口」を広げる動きが見えてきます。
2024年卒から2027年卒の変化を見ると、
インターンシップ参加者からの採用:63.6% → 70.9%
従業員からの紹介(リファラル):37.4% → 48.9%
人材斡旋サービス:23.8% → 29.2%
SNSを活用した直接採用:8.9% → 15.7%
また、通年採用も2021年卒の28.2%から2027年卒では38.3%へ増加しています。
ここで重要なのは「どの採用手法が伸びているか」だけではありません。企業と求職者が出会う場所そのものが増えていることです。
求人サイトに掲載して応募を待つだけが新卒採用ではなくなっています。インターンで出会う、社員から紹介してもらう、SNSで会社を知ってもらう、年間を通じて選考する。
つまり、募集するだけではなく、「接点をつくる」ことが採用になりつつある。ここが重要な変化だと思っています。
中小企業こそ「大手と同じ採用」をしない
特に中小企業はこの変化を意識する必要があると感じます。
新卒採用計画数に占める300人未満企業のシェアは、2017年卒の55.8%から2027年卒では51.4%へ低下しています。一方、1,000人以上の企業ではシェアが増えています。
知名度、採用予算、初任給、福利厚生、採用担当者数。こうした条件で大企業と真正面から競争すれば、中小企業が不利になるケースは少なくありません。だからこそ「大手企業と同じ新卒採用を、小さい予算でやる」という発想から離れる必要があります。
中小企業には、中小企業だからこそつくれる接点があります。経営者と直接話せる。実際に働く社員と会える。職場を見せられる。仕事を体験してもらえる。一人ひとりに合わせたコミュニケーションができる。知名度で勝てないのであれば、接点の深さで勝負するという考え方もできるのではないでしょうか。
「新卒採用」から「若手人材との接点設計」へ
ここまでの変化を考えると、今後中小企業は「新卒採用」という枠組みだけで考えない方がいいと思っています。大学新卒、既卒、第二新卒、20代中途、インターン、社員紹介、SNS。これらを別々の採用施策として考えるのではなく、「自社が必要とする若手人材と、いつ・どこで・どうつながるか」という一つの採用設計として考える。
会社を知ってもらう→興味を持ってもらう→実際の仕事を知ってもらう→社員と話してもらう→働くイメージを持ってもらう。その先に、応募や選考がある。採用媒体はその接点の一つに過ぎません。
ただし「入口」の先はまだあまり変わっていない
そして今回のレポートには、もう一つ重要な点があります。
採用の入口は多様化している一方で、採用後につながる「処遇」の個別化は、それほど進んでいません。2027年卒でも、職種によって初任給に差をつける企業は8.7%。個人の専門性や経験によって初任給に差をつける企業は4.7%。昇進の早い特別なコースを設ける企業は1.3%にとどまっています。
つまり、「誰を採用対象にするか」は広がっている。「どこで出会うか」も広がっている。しかし「採用した人をどう活かすか」は、まだ十分に変わっていない。
ここには、これからの採用を考える大きなテーマがあります。少子化によって若手人材そのものが減っていくのであれば、「何人採用したか」だけではなく、誰を採用するのか、どんな仕事を任せるのか、どう育てるのか、どうすればその人が力を発揮できるのか、まで含めて採用を考えることが課題になります。
これはレポートのエグゼクティブサマリでも、「どのような人材を採用して、その人材をどのように配属・処遇し、育成につなげていくかまで含めて、採用のあり方を考えていくことが課題」として明示されている点です。
新卒採用は「激変」していない。でも、前提は変わっている
今回の10年間のデータを見る限り、「新卒採用が激変した」とまでは言えないと思います。
企業は今も新卒採用を続けています。しかしその内側では、新卒だけに依存しない、採用対象を広げる、採用時期を広げる、接点を増やす、という変化が少しずつ進んでいます。
これまでの新卒採用が「決められた採用市場の中で学生を取り合う」ものだったとすれば、これからは「自社が必要とする若手人材と、どこで・いつ・どうつながるかを自分たちでつくる」採用への変化なのだと思います。
「少子化だから新卒が採れない」で終わらせるのではなく、自社は誰と出会いたいのか、その人と、どこでつながるのか、そして選んでもらうために何を伝えるのか。そこから採用を設計する。新卒採用の10年間のデータから見えてくるのは、そんな「静かな変化」なのではないでしょうか。
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