同感ではなく、共感できる人
営業・マネジメントで大切な「同感」と「共感」の違い
2026年9月25日

「わかります。私もまったく同じです」
営業でもマネジメントでも、こう言われると安心する瞬間があります。自分のことを理解してもらえたような気がして、相手との距離も少し縮まります。
ただ、これは「共感」というより、「同感」に近いのかもしれません。
同感と共感。似たような言葉ですが、私はこの二つには大きな違いがあると思っています。そして、この違いを理解することは、営業でもマネジメントでも、人と向き合ううえでとても大切です。
「同感」と「共感」の違いとは
同感とは、相手の意見や感情に対して「自分もそう思う」と一致することです。
一方、共感とは、自分が同じ意見や感情であるかどうかにかかわらず、「この人はそう感じているんだな」と相手を理解しようとすることです。
シンプルに言えば、
同感は「私もそう思う」という一致。
共感は「あなたはそう感じているんですね」という理解。
同感するとき、私たちは自分の経験や価値観で相手を照らし合わせています。
「私も同じ経験をしたことがある」「私も同じように感じた」「その考え方には賛成できる」
そこには、自分と相手の間に何らかの「一致」があります。
一方、共感には必ずしも一致は必要ありません。
自分には経験したことがない。自分なら違う判断をする。自分とはまったく違う価値観を持っている。それでも、「なぜこの人はそう感じるのだろう」「なぜこの人はそう考えるのだろう」と、相手の内側を理解しようとすることはできます。
同感には一致が必要ですが、共感には一致が必要ありません。
ここが、二つの大きな違いだと思っています。
同感が悪いわけではない
もちろん、同感が悪いわけではありません。
同じ経験をした人から「わかります。私もそうでした」と言われて救われることもあります。営業でも、お客様との共通点や共通体験が見つかったことで、一気に距離が縮まることがあります。
「私も同じです」という言葉には、人と人をつなぐ力があります。
ただ、同感には一つだけ条件があります。
自分と相手の間に、何らかの一致があることです。
だから、同感だけに頼って人と向き合っていると、自分と似ている人とは関係をつくれても、自分とは違う人を理解することが難しくなります。
経験が違う。考え方が違う。価値観が違う。置かれている状況も違う。
そうなった瞬間に、「わからない」で止まってしまう。
営業でもマネジメントでも、本当に難しいのは、自分と似た人と向き合うことではなく、むしろ自分とは違う人と、どう向き合うかなのだと思います。
営業に必要なのは「同意」ではなく「理解」
営業をしていると、お客様から自分とはまったく違う考えを聞くことがあります。
「そこまで品質にはこだわっていません」「今のやり方を変えるつもりはありません」「価格が一番重要です」
自分の考えとは違うかもしれません。
そこで、「いや、それは違います」と自分の価値観をぶつけてしまえば、相手との距離は広がります。
反対に、相手に合わせて「そうですよね」と同意すればいいわけでもありません。
必要なのは、「なぜ、この方はそう考えているんだろう」と考えることです。
過去に何かあったのかもしれない。置かれている状況に理由があるのかもしれない。その人が背負っている責任を考えれば、それが最も合理的な判断なのかもしれない。
相手と同じ考えになる必要はありません。
相手がその考えに至った背景を理解しようとする。
営業における共感とは、そういうことなのだと思います。
むしろ、自分とは違う意見だからこそ、「なぜ?」と考えられる。その問いから、お客様自身もまだ言葉にできていなかった事情や本音が見えてくることがあります。
営業に必要なのは、すべてのお客様に同感する力ではなく、同感できない相手にも共感できる力なのかもしれません。
マネジメントでは「理解」と「賛成」を分ける
マネジメントでも同じです。
たとえば、メンバーから、「この目標には納得できません」と言われたとします。
ここで共感するというのは、「そうだよね。この目標はおかしいよね」と一緒になって否定することではありません。それは同感です。
だからといって、「会社が決めたことだから、やるしかない」と返してしまえば、相手がなぜ納得できていないのかはわからないままです。
業務量に無理があると感じているのかもしれない。達成するイメージを持てていないのかもしれない。評価への不安があるのかもしれない。あるいは、目標が設定された背景を十分に理解できていないだけかもしれません。
まずは、「なぜ、この人は納得できないと感じているんだろう」と理解しようとする。
その結果として、目標を変えることもあれば、変えないこともあると思います。
共感することと相手の意見に賛成することは違います。
これは、マネジメントにおいてとても大切なことだと思っています。
相手の気持ちを理解することと、判断まで相手に合わせることを分けられるからこそ、違う立場にいる人とも向き合うことができます。
共感は傾聴力や質問力より前にある
営業やマネジメントでは、「傾聴力」や「質問力」が大切だと言われます。
ただ、その前にあるものが「共感する姿勢」なのではないでしょうか。
どれだけ上手に相槌を打っても、どれだけ質問のテクニックを身につけても、その根底にあるのが、「この人は自分と同じ考えなのか」を確認する姿勢だったとしたら、相手が本当に伝えたいことにはなかなか届きません。
質問をしながら、自分が期待している答えに誘導してしまうこともあります。話を聞きながら、「自分ならこうするのに」と評価してしまうこともあります。
反対に、質問の仕方が多少拙くても、「この人は、なぜそう考えているんだろう」「今、どんな気持ちなんだろう」と本当に理解しようとしている人の姿勢は、相手にも伝わるものです。
傾聴も、質問も、大切なスキルです。でも、スキルは姿勢の上に積み重なるものです。
共感は、コミュニケーションの技術というより、相手を理解しようとする姿勢なのだと思います。
「わかります」と言う前に
では、「わかります」と言ってはいけないのかというと、もちろんそんなことはありません。
大切なのは、言葉そのものではなく、その言葉を発するときに自分がどこを見ているかです。
「私も同じ経験をしたから、わかります」という「わかります」もあれば、「あなたが感じていることを、理解したいと思っています」という「わかります」もあります。
同じ言葉でも、前者は自分の経験を起点にし、後者は相手を起点にしています。
だから、「わかります」と言う前に、少しだけ考えてみる。
自分は今、この人を理解しようとしているのか。それとも、自分と同じかどうかを確認しているのか。
この違いに気づくだけでも、人との向き合い方は変わってくると思います。
自分と違う人を、理解しようとできるか
同感できる人と話すことは、それほど難しくありません。
考え方が似ている。経験が似ている。価値観が似ている。だから「わかる」と言える。
難しいのは、自分とは違う人です。
自分なら選ばない選択をする人。自分とは違う価値観を持つ人。自分には理解しにくい感情を持っている人。
そんな相手に出会ったとき「自分とは違う」で終わるのか。それとも、「なぜ、この人はそう考えるんだろう」と、もう一歩相手の側へ進めるのか。
営業でもマネジメントでも、この違いは大きいと思っています。
共感とは、相手と同じになることではなく、自分と違う相手を理解しようとすること。
すべてに同感する必要はありません。
むしろ、同感できないときにこそ、その人の「共感できる力」が表れるのだと思います。
あなたは今、相手に「同感」していますか。それとも、その人を「理解しよう」としていますか。
