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一つ上の立場で考えられる人

2026年8月26日

ここまで、「視点」と「視野」について続けて書いてきました。

「視点」は、物事をどこから見るか。「視野」は、物事をどの範囲まで見るか。そして三つ目が、「視座」です。

視座とは、物事をどの立場から見るかということだと思っています。

同じ出来事を見ていても、現場のメンバーとマネージャーでは見え方が違います。マネージャーと経営者でも違います。それは持っている情報が違うからだけではありません。その立場で背負っている責任が違うからです。

だから個人的には、視座を上げるために「今の自分より一つ上の立場だったら、どう考えるだろう」と考えてみることを勧めています。


一つ上の立場で考える

現場のメンバーであれば、リーダーやマネージャーの立場で。マネージャーであれば、部門を統括する立場で。部門責任者であれば、事業全体を見る立場で考えてみる。

ここで大切なのは、上司の考えを予想することではありません。

「部長ならこう言うだろう」「社長ならこう判断するだろう」と考えるだけでは、単なる答え合わせになってしまいます。

そうではなく、その立場だったら何に責任を持つのか。何を優先し何を諦めなければならないのか。そこまで含めて考えてみる。

一つ上の立場で考えるとは、一つ上の権限を持ったつもりになることではなく、一つ上の責任を背負って考えることではないかと思っています。


立場が変われば、判断基準が変わる

たとえば、営業の現場で「人が足りないので一人増員してほしい」という話が出たとします。

現場のメンバーから見れば「案件が多くて仕事が回らない。だから人を増やしてほしい」というのは、とても自然な考えです。

ところが、マネージャーの立場になると少し見え方が変わります。本当に人が足りないのか。仕事の配分に偏りはないか。業務のやり方を変えることで解決できないか。今いるメンバーの生産性を上げる方法はないか、と考える必要があります。

さらに事業責任者の立場になれば、一人を採用することで増える人件費に対して、どれだけの売上や利益を生み出せるのかまで考えなければなりません。

経営の立場になれば問いはさらに変わります。その一人を営業部門に配置することが、会社全体として最も優先すべき投資なのか。別の部署への投資やシステムへの投資と比べたらどうなのか。

同じ「一人増員してほしい」という出来事でも、立場が変われば判断基準が変わります。

現場の考えが間違っているわけではありません。それぞれの立場から見ればそれぞれ正しい。

ただ、一つ上の立場から考えてみることで、自分の立場からだけでは見えていなかった「判断の背景」が見えるようになります。


視座が変わると、時間軸も変わる

もう一つ、立場が変わることで変わるものがあります。それが時間軸です。

現場では、今日の仕事、今月の数字、目の前のお客様について考えることが多くなります。マネージャーになれば、今月だけではなく来月や今期について考える。事業責任者になれば半年後、一年後、その先の組織や事業について考える必要があります。

もちろん、役職が上がれば自動的に長期的な視点を持てるわけではありません。ただ、背負う責任の範囲が広がれば今だけを見て判断することが難しくなります。

「今月は数字が上がる。でも半年後にはメンバーが疲弊するかもしれない」

「今は採用コストがかかる。でも一年後の事業を考えれば今採用しておく必要がある」

目の前では合理的に見える判断も、時間軸を伸ばすと違って見えることがあります。

前回書いた「視野」と「視座」は、別々に存在しているわけではありません。立つ場所が変われば、見える範囲も、見なければならない時間も変わっていくのだと思います。


視座が高いことと、視座があることは違う

ここで、一つ注意しておきたいことがあります。

「経営から見れば、こうするべきだ」
「会社全体を考えれば、こちらが正しい」
「長期的に考えれば、今は我慢するべきだ」

言っていることは正しい。にもかかわらず、なぜか人が動かせないマネージャーがいます。

それは、相手が見ている景色まで届いていないからかもしれません。

マネージャーには一年後の組織が見えていても、現場のメンバーには今日増える仕事の方が切実です。経営者には会社全体の事情が見えていても、社員からすれば「なぜ自分たちがそれをやらなければならないのか」が分からないことがあります。

自分の視座を高く持つことは大切です。しかし、高いところから正しいことを言い続けるだけでは人はなかなか動きません。

つまり、視座が高いことと、視座があることは少し違うと思っています。

視座がある人は、一段上の立場から全体を捉えることができる。同時に、伝えるときには、相手が今見ている景色に立つこともできる人です。

考えるときは一段上へ。伝えるときは相手のところへ。

この両方ができて、初めてマネジメントになるのだと思います。


「高い」ことより、「動かせる」こと

ここまで三回にわたって「視点」「視野」「視座」について書いてきました。

最初に書いた「が」で考えるという話は、物事をどこから見るかという「視点」の話。

次に書いた「主語の範囲を広げる」という話は、どこまでを見るかという「視野」の話。

そして今回の「一つ上の立場で考える」は、どの立場から、どんな責任を背負って見るかという「視座」の話です。

ただ、この三つを考えていくと、大切なのは「正しい視点を持つこと」「広い視野を持つこと」「高い視座を持つこと」だけではないように思います。

相手側から見てみる。主語を自分からチーム、会社、顧客へと広げてみる。一つ上の立場から、その責任を背負ったつもりで考えてみる。そして必要なら、もう一度目の前の一人が見ている景色に戻ってくる。

つまり、必要に応じて自分の見る場所を動かせること。

言い換えれば、「思考の可動域」が広いことなのかもしれません。


営業でも、マネジメントでも、成果を左右するのは知識や経験の量だけではありません。

どこから見るか。どこまで見るか。どの立場から見るか。

仕事ができる人は、いつも「正しい場所」から見ている人ではなく、状況に応じて見る場所を変えられる人なのだと思います。

あなたが今抱えているその判断を、一つ上の立場から見たらどう見えるでしょうか。


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株式会社Katawaraは、「採用で、経営を変える」を掲げ、岐阜県を中心に採用戦略の構築から仕組み化・内製化支援まで、企業に伴走する採用コンサルティング会社です。単なるアドバイスにとどまらず、企業が自ら採用力を育て、自走できる体制づくりを支援しています。

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