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お客様の言葉で話せる人

2026年8月9日

営業組織には、独特の言葉があります。

「あのお客さん、Bヨミですね」 「先方、まだ検討中なんで、ヨミ化はもう少し先です」 「そこは戦略企業だから、優先度高めで」

社内では当たり前に使われている言葉です。効率的で、共通認識も取りやすい。会議も報告も、この言葉があるからスムーズに進みます。

でも、ふと立ち止まって考えることがあります。

この言葉、お客さんに聞かれたらどう思うだろうか。



"身内ワード"とは何か

ここで言う"身内ワード"とは、社内の都合で作られた顧客を分類・管理するための言葉です。

代表的なもので言えば、以下のような感じです。

  • 検討度合いを表す「A〜Dヨミ」

  • 商談の結果を表す「受注」「失注」

  • 見込みが固まることを表す「ヨミ化」

  • 取引規模や重要度で企業を括る「戦略企業」「重点顧客」

  • 決裁者を指す「キーマン」

  • 案件の進み具合を表す「案件化」「掘り起こし」

どれも、営業活動を管理するためには便利な言葉です。言葉そのものに問題が言いたいということではありません。

この言葉を使ううちに、顧客を「社内の定義」でしか見なくなるリスクがあることです。


なぜ危険なのか

「Bヨミのお客さん」という言葉を使った瞬間、頭の中の主語は"お客さん"から"ヨミ"に変わります。

その人が何に悩んでいるか、何を大事にしているか、今どんな状況にいるか。本来はそこが起点のはずですが、"Bヨミ"という記号がついた瞬間「今月中に確度を上げるにはどうするか」という社内都合の問いに置き換わってしまう。

「戦略企業」というラベルも同じです。取引額や将来性で括られた瞬間、その企業がどんな課題を抱え、何を実現したくて自分たちと付き合っているのか、という視点が後回しになりがちです。

「失注」という言葉も気になります。失注は、あくまで自社にとっての結果です。お客さんからすれば、"失注"したのではなく、"別の選択をした"、あるいは"今は必要ないと判断した"だけです。そこに至った背景を、こちらは"失注"の二文字で片づけてしまうリスクがあります。


身内ワードは、なぜ生まれるのか

身内ワードそのものが悪いわけではありません。組織で情報を共有し、優先順位をつけ、動くためには、ある程度の共通言語が必要です。

問題は、その言葉が「顧客を管理するための言葉」から、いつの間にか「顧客そのものを見る言葉」にすり替わることです。

最初は業務効率化のための略語だったはずが、使い続けるうちに、それが思考の枠組みになる。枠組みになった言葉は、無意識のうちに人の見方を規定します。

「Aヨミの人には手厚く、Dヨミの人には最低限」という行動が自然になってくると、それはもう"効率化"の域を超えて、"顧客起点の喪失"が起きているサインかもしれません。


顧客視点を保つために

身内ワードを禁止しましょうという話ではありません。管理のための言葉自体は必要です。

大事なのは、その言葉を使うときに、一度立ち止まって「この人は何を必要としているか」に翻訳し直す習慣だと思っています。

「Bヨミのお客さん」ではなく「まだ社内で比較検討中で、決め手を探しているお客さま」。 「戦略企業」ではなく、「この会社は今、こういう課題を解決したいと考えている」。

言葉を翻訳し直すだけで、次に取るべき行動が変わることがあります。


「お客様は、なんと言っていましたか?」

マネジメントの現場で、私が意識してきたことがあります。

部下から「あの案件、Bヨミです」「先方、検討中とのことです」といった報告を受けたとき、必ず聞き返す質問がひとつあります。

「お客様は、なんと言っていましたか?」

この一言を挟むだけで、報告の中身は変わります。

「検討中と言っていました」で終わっていた報告が、「予算の承認が来月の会議に回ったそうです」「他社と機能面で比較していて、特にサポート体制を気にされていました」というように、顧客自身の言葉や、実際に起きている事実に置き換わっていくのです。


身内ワードは、事実を要約し、圧縮するための言葉です。圧縮された言葉には、圧縮する過程で本人の主観や解釈が入り込みます。「検討中」という一言の裏には、本当は「価格を迷っている」のか「決裁者の一存待ち」なのか「他社と比較している」のか、まったく違う実態が隠れていることがあります。

「お客様はなんと言っていたか」と問うことは、その圧縮を一度解凍し、顧客の言葉や事実そのものに立ち返らせる作業です。


これは特別なテクニックではありません。ただ、この問いかけを習慣にするだけで、報告の解像度は上がり、部下自身も「顧客が実際に何を言ったか」を意識して商談に臨むようになります。結果として、コミュニケーションの質そのものが変わっていきます。

マネジメントとは、部下の言葉を管理することではなく、部下を通して顧客の実態を正しく見ることなのかもしれません。


あなたの組織にも、当たり前に使っている"身内ワード"はありませんか。

 その人の言葉を、もし目の前のお客さんが聞いたら、どう感じるでしょうか。


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株式会社Katawaraは「採用で、経営を変える」をテーマに採用支援を行っています。営業職・マネジメント職として20年強のキャリアを通じて、組織・個人の営業力強化のお手伝いも行っています。是非お気軽にご相談ください。

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