「採用がうまい会社」は、なぜ地方の中小企業にも存在するのか
2026年7月28日

●「うちみたいな会社には、いい人は来ない」
採用支援をしていると、こんな言葉を聞くときがあります。
「知名度もないし、給与も大手には敵わない。うちみたいな会社に、いい人が来るわけないですよ。」
中小企業の採用支援をしていると、特にこの言葉を耳にすることが多い。
気持ちはわかります。大手企業が賃上げを続け、採用に潤沢な予算を投じている。求人サイトを開けば、大手の求人が上位を占めている。地方の中小企業が不利に見えるのは、当然のことかもしれません。
ただ、同じ地域・同じ業種・同じような規模なのに、採用がうまくいっている会社も確かに存在する現実もあります。
●条件が似ているのに差がつく
採用支援の現場で不思議に思うことがあります。
同じ地域・同じ業種・似たような給与水準。なのに、片方の会社には応募が来て、もう片方には来ない。
片方の会社には人が定着して、もう片方では早期離職が続く。
この差は、何から生まれているのでしょうか。
設備でしょうか。資本力でしょうか。社長のキャラクターでしょうか。
もちろんそういった要素も影響します。しかし採用支援を通じて多くの企業を見てきた経験から言うと、最も大きな差は「採用の設計」にあります。
●うまくいっている会社の共通点
地方の中小企業で採用がうまくいっている会社には、共通していることがあります。
一つ目は、「誰に来てほしいか」が明確なことです。
「良い人が来てほしい」ではなく、「こういう価値観を持った人に来てほしい」「こういう働き方を求めている人に来てほしい」という像が、経営者の言葉として出てきます。ターゲットが明確だから、求人票の言葉が具体的になる。具体的な言葉は、読んだ人に「自分のことかもしれない」と感じさせます。
二つ目は、「なぜここで働くのか」を自分たちの言葉で語れることです。
給与・休日・福利厚生ではなく、「この会社で働く意味」を語れる会社は、条件が多少劣っていても選ばれることがあります。採用がうまい会社の経営者は、「うちはこういう会社で、こういう人たちと、こういう仕事をしている」という話を、自分の言葉で語れます。その言葉が求人票に載り、面接で伝わり、入社後の体験と一致している。
三つ目は、「採用をやりっぱなしにしない」ことです。
求人を出して終わりではなく、応募が来たらすぐに対応する。面接で会社のことを丁寧に伝える。入社後にフォローの連絡を入れる。こうした「小さな誠実さ」の積み重ねが、求職者の記憶に残ります。採用がうまい会社は、こうした接点の質を大切にしています。
●「大手と戦わない」という発想
採用がうまくいっている地方中小企業に共通するもう一つのことがあります。
大手と同じ土俵で戦おうとしていない、ということです。
給与で勝負しない。知名度で勝負しない。福利厚生の充実度で勝負しない。
ではどこで勝負しているか。
「うちにしかない文脈」で勝負しています。
創業の背景・地域との関わり・経営者の考え方・チームの雰囲気・仕事を通じて得られる経験。これらは大手企業には真似できません。規模が小さいからこそ、経営者と距離が近い。意思決定が速い。自分の仕事が会社に直結している実感がある。
こうした「中小企業だからこそ」の価値を、採用で正直に語れている会社は、それを求めている求職者に届きます。
全員に選ばれる必要はありません。「自社が求めている人に正しく届く」ことが、地方中小企業の採用戦略の核心です。
●「来てほしい人」と「来る人」のズレを放置しない
採用がうまくいかない会社に共通する問題が一つあります。
それは「来てほしい人」と「実際に来る人」のズレを、放置していることです。
「こんな応募者ばかりで困っている」という声をよく聞きます。しかしその多くは、求人票の言葉・掲載している媒体・採用の入口の設計が、来てほしい人に向いていないことから起きています。
釣りの例えをよく使います。どんな魚を釣りたいかによって、釣り場も、餌も、釣り方も変わります。「魚が釣れない」と言いながら、釣りたい魚がいない場所で、合わない餌を使っていることがあります。
採用も同じです。「来てほしい人」を定義することが先で、その人がどこにいるか・何に反応するか・どんな言葉が届くかを考えることが、採用設計の本質です。
●地方であることは弱点ではない
最後に、一つお伝えしたいことがあります。
地方であることは、採用において弱点ではありません。
通勤時間が短い。自然環境が豊かである。生活コストが低い。地域との結びつきが強い。大都市圏の喧騒から離れて働きたいという求職者は、確実にいます。
また、Uターン・Iターンを検討している人材にとって、地方の中小企業は選択肢になり得ます。都市部で経験を積んだ人が、地元に戻りたい・地方で新しいキャリアを築きたいと考えた時、魅力的な地方中小企業であれば選ばれます。
ただしそのためには、「地方の中小企業であること」を強みとして語れる採用設計が必要です。弱点として隠すのではなく、文脈として正直に語ること。それができている会社に、合う人は届きます。
採用力は、規模でも立地でも決まりません。
「誰に・何を・どう伝えるか」という設計の質が、採用力の差を生みます。
地方の中小企業が採用で勝てる時代は、すでに始まっています。ただし、その勝ち方は「大手と同じことをすること」ではありません。自社の文脈を磨き、自社が求める人に正しく届ける設計をすること。その積み重ねの先に、採用がうまい会社があります。
あなたの会社の採用は、誰に向けて設計されていますか?
株式会社Katawaraは、「採用で、経営を変える」をテーマに採用支援を行っています。
岐阜・東海エリアを中心に、地方中小企業の採用設計・ターゲット定義・自社の強みの言語化を一緒に進めることも、私たちの支援の一つです。お気軽にご相談ください。
