断り文句を、自ら口にする人
2026年7月25日

優秀な営業パーソンとはどんな人か。
これは難しい問いです。業界や扱う商品・サービスによっても違うかもしれない。
会社の知名度や商品の人気度によっても、求められるスタイルは変わるかもしれません。
「これが正解」と断言できるものは、おそらくありません。
ただ、20年以上営業の現場にいた経験から、一つだけ自信をもって「これをやると、うまくいかない」と言えることがあります。
それは「断り文句を営業自ら口にすること」です。
心当たりはないでしょうか。
「すぐにご決断いただかなくても構いません。」
「少し高いとは思いますが…。」
「ご予算に合わないかもしれませんが…。」
相手からまだ何も言われていないのに、こちらから先に言ってしまう。
では、なぜこれがNGなのか。
一見すると、謙虚で正直な言葉に見えます。相手への気遣いにも聞こえます。しかし実態は違います。
「少し高いとは思いますが」と口にした瞬間、それまで相手の頭になかったかもしれない「高い」という概念を、こちらから植え付けています。
「すぐに決められないかもしれませんが」と言った瞬間、相手に「決めなくていい理由」を渡しています。
相手が断る前に、自分で断りやすい状況を作ってしまっている。これは気遣いではなく、断られることへの恐怖が言葉として出てしまっている状態です。
営業において、沈黙は怖いものです。提案した後の間が怖い。相手の反応を待つ時間が怖い。だから何か言わなきゃという焦りが生まれる。その焦りが、断り文句になって出てくる。
自分を守るための言葉が、相手の決断を遠ざけていく。
相手が「高い」と感じたなら、相手が言います。相手が「すぐには決められない」と思ったなら、相手が言います。それを言われてから、初めて向き合えばいい。言われてもいないことを先に口にするのは、相手への気遣いではなく、自分への言い訳です。
これは営業だけの話ではないかもしれません。
会議でも、交渉でも、採用の面接でも。「怒らないでくださいね」と言ってから話し始める人。「うまく説明できないんですけど」と前置きする人。「的外れかもしれませんが」と断ってから意見を言う人。先に断ることで、傷つくことを避けようとしている。でもその言葉が、相手との距離を作っています。
「歩幅を合わせられる人」のことを以前書きました。歩幅を合わせるとは、相手を見ることです。断り文句を自ら口にする人は、相手を見ていません。自分の不安を見ています。相手が今何を感じているか。何を必要としているか。そこに集中できている人は、まだ言われていない断り文句を、先に口にしません。
優秀な営業パーソンの定義は難しい。
でも、これをやらない人であることは、条件の一つだと思っています。
あなたの周りに、断り文句を自ら口にしてしまう人はいますか。
あるいは、自分自身がそうなっていないか、振り返ってみてください。
