「辞める理由」を採用に活かしていますか?
2026年7月8日

●退職面談で聞いた言葉が、翌月の求人票に活かされていない
採用支援の現場で、こんな場面に出会うことがあります。
退職者が出た。退職面談を実施した。「一身上の都合です」という言葉を受け取った。そして翌月、また同じ求人票を出す。
この繰り返しをしている企業は、少なくありません。
退職という出来事が、採用の設計に戻ってこない。退職と採用が、組織の中で別々の出来事として処理されている。
しかしここに、採用改善のための最も重要な情報が眠っています。
●退職理由の「半数以上」は、企業に伝わっていない
まず、一つの現実を把握しておく必要があります。
エン・ジャパンが実施した「本当の退職理由」調査(2024年)によると、実に54%の回答者が「退職時に企業に伝えなかった本当の退職理由がある」と回答しました。
伝えなかった理由として最も多かったのは、「話しても理解してもらえないと思ったから」(46%)、次いで「円満退社したかったから」(45%)、「言う必要がないと思ったから」(33%)でした。
つまり退職面談で聞いた「一身上の都合」「キャリアアップのため」という言葉は、多くの場合、本当の理由ではありません。
企業が把握している退職理由の半数以上が、実態とズレている可能性がある。この前提で考えると、退職面談の設計から見直す必要があることがわかります。
●「辞める理由」は、2019年から変わっている
では、本当の退職理由は何でしょうか。
パーソル総合研究所「離職の変化と退職代行に関する定量調査」(2025年)では、2019年と2025年の離職理由の変化が明らかになっています。
2025年に上昇した不満は「求められる成果が重すぎる」「受けている評価に納得できない」。
一方で減少した不満は「サービス残業が多い」「育成・教育の体制が十分でない」「労働時間が長い」。
働き方改革の浸透により、労働時間や残業への不満は確実に減っています。
しかし代わりに、「評価への納得感」「成果のプレッシャー」「上司の指示への不満」という、より内側の問題が離職理由の上位に浮上してきました。
離職につながりやすい不満の重心は、いまや就業負荷ではなく納得感の欠如へと移っている。
この変化は、採用設計に直接影響します。「残業が少ない」「教育制度が整っている」という従来の訴求では、今の離職理由に対応できていないかもしれません。
●「辞める理由」は、入社前から予測できた問題
ここに、最も重要な視点があります。
退職理由を丁寧に聞いていくと、多くの場合、入社前から予測できた問題が含まれています。
上司の指示に納得できない、という理由で辞めた人がいたとします。採用担当だけが面接を担当し、入社後の上司とは一度も会わないまま入社したケースもあるかもしれません。
あるいは面接で上司と会っていたとしても、職場の意思決定のスタイルや日常的な関わり方については、選考の中で確認されることはなかったかもしれません。
評価に納得できない、という理由で辞めた人がいたとします。その人は入社前に、評価制度の説明を受けていたはずです。しかし「どういう行動が評価されるのか」という具体的な話はなかったかもしれません。
エン・ジャパンの調査では、会社に伝えなかった本当の退職理由として人間関係が悪いが46%で最多でした。しかし「人間関係」は入社後に突然始まるものではありません。どんな人がいる職場か・どんな文化があるか・どんな価値観が共有されているか。これらは採用のプロセスで伝えられることです。
退職理由の多くは、採用の設計で防げた問題です。
●退職データを、採用設計に戻している企業は少ない
ではなぜ、退職理由が採用に活かされないのでしょうか。
理由は構造的なものです。
多くの企業では、退職対応と採用活動が連動していません。専任の人事担当者がいる企業では、退職対応と採用がそれぞれ別の業務として処理されます。一方、中小企業では専任の人事担当者自体がいないケースも多く、経営者や現場のリーダーが退職対応も採用も兼ねて動いています。どちらの場合も、辞めた理由が次の採用設計に戻ってくる仕組みがないまま、次の採用が始まってしまうことがほとんどです。
退職者が出たから採用する。採用できたから次へ進む。また退職者が出たから採用する。
このサイクルの中では「なぜ辞めたのか」という問いが、「次にどんな人を採るか」という設計に戻ることはありません。
早期離職は当たり前だと思う派が77.8%に達し、今後の転職周期は平均3.2年という調査結果も出ています。転職が当たり前になった時代に、退職を「例外的な出来事」として処理し続けることは、採用コストの慢性的な増加につながります。
●退職面談を、「採用改善の情報収集」として再設計する
退職面談の目的を変えることが、改善への第一歩です。
お別れの儀式ではなく、採用設計の改善情報を得る場として設計する。
そのためには、聞き方が変わります。
「なぜ辞めるのか」ではなく、「入社前と入社後で、最もギャップを感じたことは何か」。「次はどんな仕事をしたいか」ではなく、「ここでの仕事を通じて、何が一番しんどかったか」。「今後の連絡先を教えてほしい」ではなく、「うちの採用活動で、改善すべき点はあると思うか」。
こうした問いから得られた言葉が、次の求人票の言葉を変え、面接で確認すべき項目を変え、入社後の体験設計を変えていきます。
なお、専任の人事担当者がいない企業では、経営者や現場のリーダーがこの役割を担うことになります。退職面談を感情的な別れの場として終わらせず、次の採用のための対話として構造化しておくことが、特に小規模な組織では重要です。
●採用のPDCAは、退職から始まる
採用にもPDCAが必要です。
しかし多くの企業では、応募数→内定数→入社数というプロセスの中だけで回っています。
本来のPDCAは、もう一周大きく回るべきです。
採用した人が、どれくらい定着したか。どんな理由で辞めたか。辞めた理由の中に、採用設計で変えられることがあったか。それを次の採用にどう活かすか。
この循環ができている企業は、採用のたびに精度が上がっていきます。逆にできていない企業は、同じ採用課題を繰り返します。
「また同じような人が辞めた」という経験が続いているなら、それは採用の設計に問題がある可能性があります。
採用と退職を、別々の出来事として処理するのをやめる。退職というデータを、採用設計に戻す仕組みをつくる。
それだけで、採用の景色は変わり始めます。
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株式会社Katawaraは、「採用で、経営を変える」をテーマに採用支援を行っています。
退職理由の分析から採用設計の見直しまで、採用を戦略として再構築することが私たちの支援の中心です。「なぜ同じような離職が繰り返されるのか」というところからでも、お気軽にご相談ください。
