採用の「入口」が、変わろうとしている
2026年7月1日

●「書類を出して、面接を受ける」が当たり前だった時代
採用といえば、こういうプロセスでした。
求人票を見て、応募書類を用意して、書類選考を通過して、面接を受ける。
これが「採用の入口」として長年当たり前とされてきました。
企業側も、この流れを前提に採用を設計してきました。書類で一次スクリーニングをして、面接で見極める。そのための書式・質問・評価シートを整えることが、採用の準備でした。
しかしこの「当たり前」が、今少しずつ揺らいでいます。
●書類・面接型が届かない人たちがいる
書類と面接によるマッチングが機能しなくなっているのではありません。この方法が有効な人材層は、今も確実に存在します。
転職意欲が明確で、自分の経歴を言語化できて、採用プロセスに慣れている人。
こうした人たちにとって、書類・面接型は依然として合理的な入口です。
問題は、そこに「届かない人たち」が確実に存在するということです。
転職しようかどうか、まだはっきり決めていない人。書類で自分を上手く表現することが苦手な人。「やってみないとわからない」と感じている人。今の仕事を続けながら、別の場所とも関わりたいと思っている人。
こうした人たちは、求人票を見ても応募ボタンを押しません。書類を書く手間がハードルになります。面接という場が、そもそも自分には関係ないと感じることもあります。
しかし、だからといって働く意欲がないわけではありませんし、能力がないわけでもありません。ただ、従来の採用の「入口」に合っていないだけです。
●「体験・現場型」のマッチングが広がっている
こうした背景の中で、採用の入口が多様化し始めています。
ある調査によると、2027年卒業予定の学生の98.2%が「就業体験のあるインターンシップに参加したい」と回答しています。新卒採用の世界では、「まず体験する」という入口はすでに主流になりつつあります。
パート・アルバイトの領域でも、スポットワークサービスの広がりによって「まず1日働いてみる」という関わり方が生まれています。応募・書類・面接というプロセスを経ずに、実際の現場で接点を持つことができる。
「応募→選考→採用」という一方通行のプロセスから「体験→関係構築→採用」という双方向のプロセスへ、採用の入口の形が変わろうとしています。
2026年の採用トレンドとして「採用CX(候補者体験)の改善」が最重要課題の一つとして挙がっており、採用プロセスそのものを求職者の体験として設計し直す動きが加速しています。
●二極化するのではなく、入口が「複数」になる
その中で、整理しておきたいことがあります。
「書類・面接型」と「体験・現場型」に採用が二分されるという見方があります。
しかし個人的にははそうは捉えていません。
どちらかが正しくて、どちらかが古くなるという話ではありません。
これからの採用市場では、入口が「複数」になる、というのが正確な見方だと思っています。
書類・面接型が有効な人材層は残ります。それと並行して、体験・現場型でしか出会えない人材層が確実に存在する。企業が一つの入口しか持っていなければ、もう一方の層には永遠に出会えない。
一つの入口で採用を完結させようとする企業と、複数の入口を設計できる企業の差が、これから採用力の差として現れていくのではないかと思っています。
●「正規・非正規」より「関わり方のグラデーション」へ
この変化は、採用の入口だけの話ではありません。
雇用形態の二分法、つまり「正社員か、そうでないか」という見方も、実態に合わなくなってきています。
1日スポットで関わった人が、また来たいと思う。複数回働くうちに、もっと深く関わりたくなる。副業として週数時間関わりながら、いつかフルタイムで働くことを考え始める。
こうした「関わりの深化」を設計できる企業が、人材との長期的な関係を作っていける時代が来ています。
「採用するかしないか」という二択ではなく「どんな関わり方から始めるか」を設計することが、採用の新しい問いになっていきます。
●「入口の多様化」は、採用設計の質を問う変化
ただ、一つ注意が必要なことがあります。
体験・現場型の採用が広がることは、採用のハードルが下がることではありません。むしろ逆になる可能性があります。
見学・体験・スポットワークを「採用の入口」として機能させるためには、現場を見せられる状態になっていること、体験を通じて自社の魅力を伝えられる設計があること、体験後に関係を続けるための動線があること。これらが必要です。
「とりあえず来てもらえばわかる」では、入口として機能しません。体験を通じて何を感じてもらいたいか、どんな印象を残したいか、体験後にどうつながるか。これらを設計していない企業にとって、体験型の採用は逆に難易度が上がる変化です。
つまり「入口が多様化する」という変化は、採用の設計力が問われる度合いをさらに高める変化です。
採用は単なるオペレーションではなく、「いかに自社を選んでもらうか」という戦略的な活動になった、というのが2026年の採用市場の現実です。
●これからの採用で問われること
整理するとこうなります。
書類・面接型の採用は、これからも一定の有効性を持ち続けます。
しかし、それだけでは出会えない人材層が確実に存在します。
体験・現場型の入口を作ることで、これまで届かなかった人たちとの接点が生まれます。
しかしその入口を機能させるには、設計が必要です。
そして両方に共通する問いがあります。
求職者にとって、あなたの会社との最初の接点はどんな体験だったか。その体験が、「もっと関わりたい」という気持ちにつながったか。
採用の入口が変わっても、その問いの本質は変わりません。
どんな入口であれ、そこでどんな体験を渡せるかが、採用の質を決めます。
これからの採用市場は、「どこで募集するか」よりも「どんな体験を設計するか」を問う市場に向かっていくと思っています。
株式会社Katawaraは、「採用で、経営を変える」をテーマに採用支援を行っています。
書類・面接型の採用設計から、体験・現場型の入口づくりまで、自社にとって最適な採用の設計を一緒に考えることも私たちの支援の一つです。お気軽にご相談ください
