「紹介してもらえる会社」には理由がある
2026年6月22日

●リファラル採用が、企業の半数に広がっている
先日、こんな調査結果が公開されました。
リファラル採用はほぼ企業の半数に広がっており、従業員の定着率が最も高い採用方法として「リファラル採用」を挙げた企業が18.5%で、転職エージェントからの紹介(5.4%)や新卒採用(10.4%)を上回ったという結果が出ています。
参照:「リファラル採用」 企業の半数に広がる 定着率はリファラルが新卒、転職エージェントを上回る
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202969_1527.html
社員に友人や知人を紹介してもらう採用が、これだけ広がっている。
ただこの結果を見て、一つの問いが浮かびました。
リファラル採用がうまくいっている会社と、そうでない会社の違いは何か。
仕組みを作れば、社員は紹介してくれるのでしょうか。
●「制度」を作っても紹介が集まるとは限らない
リファラル採用の取り組みを始める企業の多くは、まず仕組みを作ります。
紹介した社員に報酬を払う制度・社内への周知・専用フォームの設置。
ただこうした仕組みを整えても、紹介が集まらないという話も現場ではよく聞きます。
なぜでしょうか。
リファラル採用を取り入れている企業のうち、紹介した従業員への報酬を「支払っていない」と回答した企業が40.9%で最多だったというデータがあります。
つまり、報酬がなくても紹介が生まれている企業がある一方で、報酬を用意しても紹介が集まらない企業がある。
この差はどこから来るのでしょうか。
●社員が「紹介したくなる」には理由がある
少し考えてみてください。
あなたが友人に「うちの会社、来ない?」と声をかける時、どんな気持ちでしょうか。
自分が誇りを持って働いている会社なら、自然と勧めたくなります。
逆に、不満を抱えながら働いている会社を、大切な友人に紹介しようとは思いません。
リファラル採用の本質は、ここにあります。
社員が紹介してくれるかどうかは、制度の有無ではなく、「この会社を誰かに勧めたいと思えるか」という社員の感情が起点になっています。
報酬がなくても紹介が生まれる会社は、社員がその会社で働くことに誇りや満足を感じているということです。
逆に言えば、リファラル採用がうまくいかない会社は、制度の問題ではなく、職場そのものへの問いを持つ必要があるかもしれません。
●「紹介したい会社」は、採用前から始まっている
もう一つ重要なことがあります。
リファラル採用は採用の”手法”として語られますが、その土台にあるのは採用よりずっと前の話です。
どんな職場環境を作っているか。社員が仕事に意味を感じられているか。会社の方向性が社員に伝わっているか。
日々の仕事の中で、社員が「ここで働いていて良かった」と思える瞬間があるか。
これらが積み重なって初めて、友人にも紹介したいという気持ちが生まれます。
採用の仕組みを整える前に、今いる社員がこの会社を誰かに勧めたいと思っているかという問いと向き合うことが、リファラル採用の本当の出発点です。
●アルムナイ採用が広がる理由も、同じ構造
最近、退職した元社員を再雇用する「アルムナイ採用」も広がっています。
リファラルとアルムナイの両方を採用に取り入れている企業は27.0%で、大企業では34.4%に達しているというデータもあります。
アルムナイ採用が成立するのは、一度退職した人が「またあの会社で働きたい」「あの会社なら戻っても良い」と思っているからです。
辞めた会社に戻りたいと思う人がいるということは、その会社での体験が悪くなかったということです。在職中の関係性・退職時の対応・会社への信頼感。これらが退職後も続いているから、再びつながれる。
アルムナイ採用もまた、採用の手法である前に、辞めた人にも選ばれる会社かどうかという会社そのものの問いです。
●リファラルの「落とし穴」にも目を向ける
リファラル採用には、注意すべき点もあります。
一つは「同質化のリスク」です。社員が紹介するのは、多くの場合、自分と価値観や背景が近い人です。それが続くと、組織の中に似たような人ばかりが集まり、多様な視点や発想が失われていく可能性があります。
もう一つは「人間関係の複雑化」です。紹介した社員と紹介された社員の関係が、職場に持ち込まれます。紹介者が先輩・上司だった場合、紹介された側が言いにくいことを言えなくなるケースもあります。また不採用になった場合、紹介した社員との関係にも影響が出ることがあります。
さらに「紹介文化の強制化」も起きやすい落とし穴です。経営者や上司が社員に紹介を求めるプレッシャーをかけてしまうと、本来自発的であるべきリファラルが義務のようになってしまいます。それは社員にとってのストレスになるだけでなく、紹介された候補者にとっても「断りにくい状況で声をかけられた」という体験になりかねません。
リファラル採用は、あくまで社員の自発的な気持ちから生まれるものです。仕組みで強制するものではありません。
●リファラルが広がる時代に、採用の「主語」が変わる
リファラル採用には、もう一つ重要な視点があります。
通常の採用では、求人を出すのも、応募者と連絡を取るのも、面接をするのも、基本的には人事や採用担当者です。採用は「人事部門の仕事」として完結しています。
しかしリファラル採用では、社員一人ひとりが採用の当事者になります。
誰を紹介するか・どんな言葉で声をかけるか・会社のどこを魅力として伝えるか。これらの判断を、現場の社員が日常の中で行っています。
言い換えれば、リファラル採用とは「従業員全員がリクルーター」になる採用です。
これは採用の構造として、大きな転換です。採用担当者が一人で動く採用と、組織全体が採用を意識して動く採用では、出会える人材の量も質も、根本的に変わってきます。
●「採用は人事の仕事」という前提を、問い直す
ただここで、一つの問いが生まれます。
社員が自発的にリクルーターとして動くためには、何が必要でしょうか。
まず、会社のことを誰かに語れるだけの理解と誇りが必要です。自分でもよくわからない会社のことを、他人に勧めることはできません。
次に、「自分が紹介した人にとっても良い選択になる」という確信が必要です。友人の人生に関わることを、無責任に勧める人はいません。
そしてもう一つ。採用を”自分ごと”として考えられる組織文化が必要です。「採用は人事の仕事だから、自分には関係ない」という意識が社員の中にある限り、リファラルは生まれません。
これらを整えることは、採用担当者だけでできることではありません。経営者が採用をどう語るか・会社のビジョンや価値観が社員に届いているか・現場のリーダーが採用を自分ごととして考えているか。
リファラル採用がうまくいっている会社は、採用を組織全体の問題として捉えています。
採用は人事部門の業務ではなく経営そのものである。リファラル採用の広がりは、その問いを改めて突きつけているように思います。
●「紹介したくなる会社」を作ることが、採用の本質に近い
リファラル採用の定着率が高い理由は、手法の優秀さではないと思っています。
紹介する側(社員)が会社のことをよく知っていて、紹介される側(候補者)も声をかけてくれた人を信頼している。その信頼の連鎖の中で生まれた入社だから、入社前後のギャップが少なく、定着につながりやすい。
つまり、リファラル採用の定着率の高さは、採用プロセスの結果ではなく、「信頼できる人から信頼できる人へ」というつながりの質の結果です。
そう考えると、リファラル採用を”やるかやらないか”という話よりも先に、問うべきことがあります。
・今いる社員は、この会社で働いていることを誰かに話したいと思っているか。
・辞めた社員は、この会社のことをどう語っているか。
・採用を人事の仕事と切り離さず、組織全体の問いとして持てているか。
この問いに向き合うことが、リファラル採用の制度設計よりも、ずっと重要な出発点だと思っています。採用で、経営を変えるとはそういうことかもしれません。
株式会社Katawaraは、「採用で、経営を変える」をテーマに採用支援を行っています。
リファラル採用の仕組みづくりの前に、「今いる社員が誇りを持って働ける職場・採用設計になっているか」を一緒に考えることも、私たちの支援の一つです。お気軽にご相談ください。
