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採用のAI化が進む時代に、失ってはいけないものがある

2026年6月18日

●「便利な採用」が、求職者を遠ざけているかもしれない

少し前、こんな記事が目に留まりました。

海外の調査で、求職者の約6割が応募プロセスの途中で断念した経験を持ち、その多くが20分以内に離脱しているという実態が報告されていました。

https://forbesjapan.com/articles/detail/99283?s=ns


理由は、複雑な応募フォーム・自動返信しか来ないメール・どこに何が届いているのかわからない選考状況。

企業側が「効率化」のために導入したシステムが、求職者にとっては「冷たくて面倒なブラックボックス」になってしまっていたのです。

これは海外の話ですが、日本でも同じことが起きていると思っています。


●AI採用ツールが広がっている、その背景

採用の現場でAIツールが広がっている背景には、明確な理由があります。

少子化による採用難・採用担当者の業務過多・選考スピードへの要求の高まり。これらが重なり、「効率化できるところはAIに任せる」という流れが加速しています。

日本企業においても、約56.9%の企業が採用へのAI活用に前向きであり、すでに20.6%が導入済みという調査結果も出ています。 

スクリーニング・書類整理・面接の日程調整・応募者への自動返信。こうした作業をAIが担うことで、採用担当者は本来注力すべき業務に時間を使えるようになります。

これ自体は、正しい方向性だと思っています。

問題は「何をAIに任せるか」の判断です。


●AIが代替できること、できないこと

採用の業務を分解すると、大きく二つの層があります。

一つは「処理の層」です。応募情報の管理・書類の整理・日程調整・進捗の追跡。

これらは正確さとスピードが求められる作業で、AIが得意とする領域です。

もう一つは「関係の層」です。求職者がこの会社や職場に興味を持つ瞬間・面接で感じる職場の空気・「ここで働きたい」という気持ちが芽生える体験。

これらは、人と人の間にしか生まれません。


問題が起きるのは、この二つの層を混同した時です。

「処理の層」をAIに任せることで生まれた時間を「関係の層」に使えているか。それとも、「関係の層」までもAIに任せてしまっていないか。

ここが、採用のAI活用の本質的な問いだと思っています。


●「効率化」が「手抜き」に見える瞬間

求職者の立場で考えてみてください。

応募してから数日、自動返信しか来ない。面接の案内もシステムからだけ。担当者の名前すら見えない。選考の途中で「現在審査中です」という定型文が届く。

こうした体験の積み重ねの中で、求職者は何かを感じ取ります。

「この会社は、自分のことを人として見ているのだろうか。」


企業にとっての「効率化」が、求職者にとっての「手抜き」として映ってしまう瞬間です。

AI面接に抵抗感を持つ学生も一定数に上るという現場の声もあります。技術的に可能であることと、求職者に受け入れられることは、別の話なのです。 


●採用は、そんなに単純ではない

「1秒で仕事に就ける世界」という言葉を聞いたことがあります。

技術的にはそれに近いことが実現できるかもしれません。AIが瞬時にマッチングし、条件を自動で確認し、内定通知を送る。

ただ私は、そこに一つの問いを持っています。

その進化に、人は本当に適応できるのでしょうか。


仕事を選ぶことは、人生の選択です。どんな人と働くか・どんな環境に身を置くか・自分の時間と能力をどこに差し出すか。

その決断を、求職者は「処理」として受け取りたいのでしょうか。

おそらく、そうではないと思っています。

条件が合っていても、「なんとなくこの会社には行きたくない」と感じることがあります。

それは多くの場合、スペックの問題ではなく、接点の中で感じた「人の温度」の問題です。

採用は、そんなに単純ではありません。


●自動化を使いながら、誠実であること

では、AIツールを使うべきではないのでしょうか。そうは思いません。

使えるものは使う。作業を効率化することで、求職者一人ひとりとの関係に使える時間を増やす。それが正しいAI活用の姿だと思っています。

重要なのは、自動化しながらも「誠実であること」を手放さないことです。

例えば、自動返信の中に一言でも人の言葉があるか。面接の前に、担当者から一本の連絡があるか。不採用の通知にも、相手への敬意が込められているか。

こうした小さな「人間味」が、採用における信頼を作っていきます。


応募者体験が悪ければ他社に流れ、選考スピードが遅ければ辞退されるという現実がある一方で、スピードだけを追った結果、温度のない採用になってしまうことも、同じくらいリスクにならないでしょうか。

「いかに速く処理するか」と「いかに誠実に向き合うか」は、両立できます。

ただし、その両立には意識的な設計が必要です。


●採用AIの時代に、差がつくのは「人間がやること」

皮肉なことですが、採用のAI化が進めばすむほど、「人間がやること」の価値が上がっていくのだと思います。

みんながAIを使い始めた時、AIを使っていない部分が際立つからです。

自動化が当たり前になった世界で、担当者から届く一言のメッセージ・面接官の言葉の温かさ・選考中の丁寧なコミュニケーションは、今よりずっと強く求職者の記憶に残るはずです。

採用のAI化が進む時代に失ってはいけないのは「採用は人と人のやりとり」という感覚。


どれだけ効率化が進んでも、その感覚を持っている企業が、最終的には「あの会社は良かった」と言われる採用をしていくのだと思っています。



株式会社Katawaraは、「採用で、経営を変える」をテーマに採用支援を行っています。

ツールや手法の話だけでなく、「採用において大切にすべきこと」を経営者と一緒に考えることも、私たちの支援の一つです。お気軽にご相談ください。

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