なぜ経営者は「採用」だけ外注してしまうのか?
2026年6月3日

●採用だけが、なぜか「外の仕事」になっている
経営者の方とお話ししていると、以前から不思議に感じていることがあります。
それは、「採用だけが、なぜか外部の仕事になっている」ということ。
売上が落ちた・利益率が下がった・新規顧客が増えない・商品が売れない
そんな状況になった時、経営者はまず自社の事業に向き合います。
商品を見直す・サービスを見直す・営業を見直す・顧客を見直す。
事業そのものを改善しようと考える。これは至極当然のことと言えます。
それが会社の根幹だからです。
しかし採用になると、少し様子が変わります。
求人媒体へ掲載する。・人材紹介会社へ依頼する・採用代行へ依頼する。
「良い人を連れてきてほしい」という話になることも少なくありません。
もちろん外部の力を借りることは悪いことではありません。
私たちも採用支援を行っていますし、専門家の知見が必要な場面は数多くあります。
ただ、一つだけ違和感があります。
それは「自社の事業そのものを丸ごと外注する企業はほとんどないのに、採用になると丸ごと外部へ任せようとする企業が少なくない」ということです。
●経営資源の一つなのに、なぜ採用だけ外注するのか
経営には様々な考え方がありますが、古くから「ヒト・モノ・カネ」は経営の三大資源と言われています。
最近では情報を加えて四大資源と表現されることもありますが、その中でも「人」が重要であることに異論を持つ経営者は少ないでしょう。
どれだけ優れた商品があっても、どれだけ良いサービスがあっても、
それを提供する人がいなければ事業は成り立ちません。
商品開発は自社で考える・営業戦略も自社で考える・財務戦略も自社で考える。
しかし採用だけは、「採ってきてもらう」という発想になってしまう。
ここに私は大きな違和感を感じています。
●本来、採用会社が決められないこと
採用支援の現場で「良い人を採りたい」という相談をいただくことがあります。
しかし、その後に必ず聞く質問があります。
それは「御社にとって、良い人とはどんな人ですか?」という問いです。
すると意外なほど多くの企業が言葉に詰まります。
明るい人・やる気がある人・コミュニケーション能力が高い人。
そうした言葉は出てきます。
しかし、それだけでは採用基準にはなりません。
本当に必要なのは、
どんな価値観を持つ人なのか・どんな行動特性を持つ人なのか・どんな環境で成果を出すのか・何に喜びを感じるのか・どんな人は合わないのか、などという定義です。
そしてこれは、採用会社が決めることではなく、経営者自身が考えるべき問いです。
●採用課題の多くは、採用工程の外にある
応募が来ない、定着しない、活躍しない。
企業が抱える採用課題の多くは、こういった問題を抱えていると思います。
しかし、それらは本当に採用の問題なのでしょうか。
応募が来ないのは、企業の魅力が伝わっていないのかもしれません。
定着しないのは、育成設計やマネジメントに課題があるのかもしれません。
活躍しないのは、採用基準ではなく配置や評価制度の問題かもしれません。
つまり、採用で起きている問題の多くは採用工程の中ではなく、経営そのものに原因があるケースが少なくないのです。
●人が足りないのではなく「自社に合う人」が定義されていない
現在、多くの企業が人手不足を課題にしています。
それ自体は事実です。人口減少も進んでいます。労働市場も大きく変化しています。
しかし私は「人が足りない」という言葉の裏側に、もう一つの問題が隠れていると考えます。
それは、「自社に合う人材像が定義されていない」という問題です。
採用が安定している企業は求人市場ばかり見ていません。
むしろ、自社で活躍している人を見ています。
なぜ活躍しているのか・何が共通しているのか・どんな価値観を持っているのか。どんな行動を取るのか。
つまり、求人市場ではなく自社を研究しているのです。
●採用は、人集めではない
採用とは人を集める活動ではありません。
採用とは、自社にとっての「いい人」を定義し、その人から選ばれ・定着し・活躍する仕組みをつくることです。
だからこそ採用は広告活動でとどめず、経営活動として捉えてほしい。
事業戦略・組織文化・評価制度・育成・マネジメント・理念。
これらすべてが採用に表れます。
採用とは、企業の経営そのものが映し出される鏡なのです。
●採用を外注する前に、経営者が考えるべきこと
求人媒体、人材紹介会社、採用支援会社も必要です。私たちもその一員です。
しかし、それらはあくまで手段に過ぎません。
どんな人を採りたいのか・なぜその人が必要なのか・その人に何を期待するのか・その人が活躍するために何が必要なのか。
この問いに答えられるのは、経営者しかいません。
だから、採用を広告活動ではなく経営活動として再定義できた企業から、人材不足の時代でも選ばれ続けるようになると思っています。
採用とは、人集めではありません。会社の未来をつくる経営そのものなのです。
