“いい人”は、なぜ言語化できないのか?
2026年5月24日

採用支援をしていると、企業からよくこんな言葉を聞きます。
「いい人がほしい」「うちに合う人を採りたい」「長く続く人がいい」
でもそこで立ち止まって考えてみてほしいです。
“いい人”って、どんな人ですか?
この質問に対して明確に答えられる企業は、実はそこまで多くありません。
明るい人・コミュニケーション能力が高い人・主体性がある人といった言葉は出てきます。
でも、それだけでは少し曖昧です。
例えば「コミュニケーション能力が高い人」と言っても、
初対面でも話せる人なのか
空気を読める人なのか
相手に合わせて距離感を調整できる人なのか
周囲を見ながら動ける人なのか
で、かなり違います。
実際、現場で活躍している人を見ると「話がうまい人」より、
忙しい時に自然と周囲を見られる人
空気を悪くしない人
お客様との距離感が自然な人
感情が安定している人
だったりする。
つまり企業は本当は、“感覚”では分かっているんです。
ただ、それを言葉にできていない。
そして私は、ここに採用の難しさがあると思っています。
●面接は「感覚のすり合わせ」になりやすい
採用でよく起きるのが、「なんか違った」です。
面接では良いと思った。でも現場ではなじまなかった。
逆に、面接では地味に見えた。でも入社したらすごく活躍した。
こういうことは、本当によくあります。
なぜか。
それは企業側が「活躍する人」を、言語化できていないからだと思っています。
つまり採用基準が、
雰囲気
好み
フィーリング
なんとなくの印象
になりやすい。
もちろん、人を見る仕事なので、最後は感覚も重要です。
ただ、それだけだと再現性がなくなる。
例えば、
面接官によって評価が違う
店長ごとに採用基準が違う
“なんとなく良さそう”で決まる
現場とのミスマッチが起きる
こうした状態になりやすい。
だから私は、採用とは単に“人を探すこと”ではなく、「自社に合う人」を、言葉にしていく作業だと思っています。
●コンピテンシー採用は「活躍する人」を観察する考え方
ここで重要になるのが、“コンピテンシー”という考え方です。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、
簡単に言えば「成果を出している人にはどんな行動特性があるのか」を整理する考え方です。
例えば、
周囲への声掛けが自然
忙しい時ほど冷静
指示待ちになりにくい
相手に合わせて話し方を変えられる
小さな違和感に気づける
単なる「性格診断」ではなく、“活躍している人の共通行動”を観察し、再現可能な形へ整理していく。
それがコンピテンシーの考え方です。
この考え方は、特に現場採用ではかなり重要だと思っています。
なぜなら「良い人だった」では再現できないからです。
●“いい人”を整理すると、4つに分かれる
人材要件の整理・言語化は以下4つに分けて整理するのがオススメです。
スキル
タイプ
コンディション
ポテンシャル
①スキル
これは比較的分かりやすいです。経験、資格、業務知識など。
例えば、
接客経験
レジ経験
調理経験
CADが使える
など。
ただ実際、アルバイト・パート採用では、スキルよりも別の要素が重要になるケースも多い。
②タイプ
採用においては、ここがかなり重要だと思っています。
例えば、
空気感
人との距離感
周囲との関わり方
感情の安定性
お客様への接し方
など。
私は以前、別の記事で、“店長のお気に入り”という表現を使いました。
少し俗っぽい言い方かもしれませんが、現場ではかなり伝わります。
また一緒にシフト入りたい
忙しくても空気を悪くしない
周囲を自然に見て動ける
指示待ちになりすぎない
お客様との距離感がちょうどいい
例えばそういう人です。
これは単なる“スキル”ではありません。
むしろ、「その現場とちゃんと接続できている状態」に近い。
実際、長く定着し現場で信頼される人は、この“タイプ”が合っているケースが非常に多い。
ただ、この「タイプ」は難しい。なぜなら言語化されないままだと、
好き嫌い採用
感覚採用
“なんとなく合う”
同質化
になりやすいからです。
だからこそ重要なのは、「なんとなく良い」を、“どこが、どう良いのか”まで分解することなのだと思います。
「成果を出している人には、どんな行動特性があるのか」を観察し、整理していく。
「店長のお気に入り」を単なる感覚で終わらせず、“なぜその人が信頼されるのか”を言葉にしていくことでもある。
③コンディション
これは、働ける条件です。
例えば、
土日勤務できるか
夜シフトに入れるか
通勤距離
子育てとの両立
テスト期間
など。
能力ではないですが、現場では非常に重要です。
最近は間口を広げる求人も増えています。
もちろん、それ自体は悪いことではありません。
ただ実際には、“働ける条件”が合わないことで、ミスマッチが起きるケースも多い。
つまり採用では、「できるか」だけではなく、「続けられるか」も重要なんです。
④ポテンシャル
これは、今できることではなく、「これから伸びる可能性」です。
例えば、
素直さ
吸収力
継続力
学ぶ姿勢
カルチャーフィット
など。
特に未経験採用では、ここがかなり重要になる。
実際、最初は不器用でも、
周囲に相談できる
フィードバックを受け止められる
コツコツ改善できる
人は、後から伸びることが多い。
つまり企業が本当に見るべきなのは、“今完成している人”だけではないのだと思います。
●採用とは「会社の価値観」を言葉にすること
採用とは単なる人集めではなく、「会社そのものを言語化する作業」なのだと感じています。
どんな人が合うのか。どんな働き方が合うのか。どんな空気感を大切にしているのか。
それが言葉になって初めて、“この会社、自分に合うかもしれない”につながっていく。
逆に言えば、“いい人”が採れない会社ではなく、“いい人を説明できていない会社”も、実は少なくないのかもしれません。
採用は、単なる条件マッチングではありません。
だからこそ、「なんとなく良い人」を、“なぜ良いと思うのか”まで言葉にしていくことが、
これからの採用ではますます重要になるのだと思います。
